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GMアーカイブス

GM plus(+)Biz グローレブランドの「必然的」路線変更

メーカーは、製品開発にあたり必ず購入者のターゲットを絞って開発を行う。しかし、そんな綿密な予想を超えて消費者が予想外の行動をおこすことがある。例えば、女性向け商品として開発したのに男性にも支持された、メインのお菓子よりおまけの玩具に人気が集中したなど多くはないものの少なくない例が存在する。このような現象がゴルフ界にも起きた。

2013年国内女子ツアー開幕戦モデル別使用率NO.1

女子ツアーが開幕してすぐ、テーラーメイドのサイトにこのようなページが載った。「使用率NO.1」のクラブとは、テーラーメイド・グローレのドライバー、フォージドアイアンの使用率を指す。多くのゴルファーは、この事実について驚きや違和感を持たれたことだろう。

なぜならば、グローレはテーラーメイドの新機軸のブランド。スリクソンのXXIO、ブリヂストンのPHYZへ対抗しうるブランドとして、国内のシニアゴルファーをターゲットとして立ち上げられた。当然のこととして、シニアゴルファーの悩みを改善すべく多くの新技術や既存技術の改良がすすめられた。2012年3月発売当時からグローレシリーズの評価は高く、青木功プロの絶賛ぶりを多くの方が覚えておられるだろう。「シニア向けクラブ」と「女子プロ使用」がイメージとして合致しないのは当然である。

この現象が起きた答えはシンプルだ。グローレ製品の品質は開発側の思惑を以上に高かったということだ。先の女子ツアーでグローレを選択したプロの約3分の2はテーラーメイド契約外のプロ。この数字だけでも、いかにグローレが女子プロ選手から評価されていたかがわかる。

テーラーメイド側はこのような動きは、もっと前から把握していたのだろう。2012年12月に発売されたグローレからの派生ブランド「グローレ・リザーブ」シリーズには「シニア向け」のイメージはない。グローレブランド発表時に、これでもか!と流された「シニア向けアピール」の広告は鳴りを潜めた。

今後、グローレはテーラーメイドの特定世代向けブランドではなく、価格帯を軸とした全世代的ブランドへと変化していくことだろう。そのような動きに対応できる体制もテーラーメイド側には整っている。グローレブランドの成長は今後、一気に加速する可能性を秘めている。

「品質の追求の結果、メーカーの思惑を超えたクラブが出現した」という現象は、本来は日本メーカーから起きてほしいものだ。ただ、グローレという思わぬ強敵の出現への対抗策を講じるプロセスの中で、日本のゴルファーを唸らせるクラブが出現する可能性もあるだろう。日本メーカーの奮起に期待したいものである。

(2013年 5月 掲載)


イノベーションの萌芽~ゴルフのミライ~

オーストリアの経済学者、シュンペーターは言った、「イノベーションが経済を発展させる」と。もし、それがゴルフの発展にもあてはまるのだとするならば、ゴルフのイノベーションとは、何であろうか?技術革新であろうか、新しいサービスだろうか、全く新しいゴルフ理論であろうか。

イノベーションの萌芽~ゴルフのミライ~は、あらゆるゴルフの新しい胎動に着目。その未来を考察する。

今回は、帝人株式会社(大阪市)グループが開発した、新素材「ナノフロント(R)」に着目する。

nano(ナノ)。ミリが0.001(千分の一)を表すのに対して、ナノは、0.000 000 001(十億分の一)を示す。帝人が開発した、ナノフロントは、繊維1本あたり700ナノメートルの細さ。メーカー発表値で、髪の毛の約1/86、断面積換算では、約1/7500の細さしかない。この細い細い繊維がゴルフを変えようとしている。

アクシネットジャパン(東京都江東区)は、この細い繊維に着目。『ナノロック』の製品名で「フットジョイ」ブランドのグローブに採用した。細い繊維で何が変わったのか?それは、
・皮膚との接点が小さくなったため、高い密着感と適度なつけ心地を実現。密着感は、高いグリップ力を生む。
・細い繊維ゆえに、繊維間の隙間が広く通気性と撥水性が高くなった。不快な蒸れもなく、雨や汗に強い。

であるが、それ以上に革命的となったのは、その薄さだ。

細い繊維ゆえに実現した薄さは、従来のグローブの概念を覆した。天然皮革や人工皮革のグローブが主流であるゴルフグローブゆえに、その薄さは異端に感じるゴルファーもいるだろうが、その感覚は、これまで薄いグローブが存在しなかったゆえだと思われるのだ。そもそも、グローブに一定の厚さが必要だという理由はない。むしろ、素手に近い感覚はゴルファーの要望に近いはずだ。

この薄いグローブ誕生は、ゴルフグローブの大きな分岐点になるだろう。グローブに素手に近い感覚を求めるゴルファーは、このグローブを手放さないはずで、この市場の一定の支持層となると考えられる。このグローブが浸透するにつれて、決して少なくないゴルファーがこの薄いグローブへ乗り換える可能性は十分だ。

ナノロックの成功によりダンロップ、ブリヂストンもこの分野に参入。供給体制も整いつつある。

このナノフロントは、素材にポリエステルを使用している。ポリエステルは、被服に多く活用されており、大半のスーツの裏地はポリエステルである。また、ペットボトルの素材もこのポリエステルの仲間である。

筆者がナノフロントに着目するのは、帝人が取り組んでいる「繊維を細くする技術」へのアプローチの進展にある。ナノフロントは、比較的構造が単純なポリエステルが素材であるが、今後この技術が発展すれば、ポリエステル以外の素材で細い繊維がうまれてくるだろう。その都度、画期的なゴルフ用具がうまれる可能性が高い。さまざまなメーカーがゴルフ用具への応用を試みることが予想されるからだ。グローブはもちろん、グリップ、ウエア、キャップ(サンバイザー)に留まらない発展が期待される。

そう遠くない将来に、私たちは天然芝とほとんど変わらない風合いをもつ人工芝でパットの練習をしているかもしれないのだ。

たとえ、小さなテクノロジーの進化であっても、ゴルフへ影響を与える。ゴルフは技術と資本の親和性が高い分野だ。いろんな「今」着目し、ゴルフへの波及効果を考えることもゴルフの楽しみの一つであるといえる。


名設計家のラビリンス。デズモンド・ミュアヘッドのデザイン


Mission Hills Country Club, Rancho Mirage, California / danperry.com

「このゴルフ場を設計した人物は何を考え、何を想ったのだろうか?」

デズモンド・ミュアヘッド(1924年~2002年)

彼の手がけたゴルフ場でプレーをした経験をもつゴルファーのほぼ全てに共通する思いなのではないだろうか?斬新、個性的などという言葉では、説明できない独特の世界観を有するゴルフ場を遺した稀有の設計家を追う。

歌手として活躍する一方で、女子プロゴルフ界の発展に貢献したダイナ・ショア。彼女の尽力で産声をあげた大会の系譜をもつクラフト・ナビスコ選手権。春の訪れを告げ、LPGA(米国)の歴史に名を刻む伝統あるこの大会は、ロサンゼルスから西へ車で2時間ほどのランチョ・ミラージュにあるミッションヒルズ・カントリークラブで行われる。

このゴルフ場の設計を手がけたデズモンド・ミュアヘッドは、イギリス出身でケンブリッジ大(英)、ブリティッシュ・コロンビア大(カナダ)で建築や造園学を学んだ。

このころのミュアヘッドは、アーノルド・パーマーやジャック・ニクラウスら名ゴルファーと組んで仕事をしていた。ニクラウスとのコンビで設計したミュアフィールド・ビレッジ(米国・オハイオ州)は、ゴルフ設計家としての彼の名を世界に知らしめた。

美しく、水と緑が調和した流線型の設計。ニクラウスとのコンビだったゆえに「ミュアヘッドらしさ」は、希薄化しているのかもしれないが、ゴルファーへの多くのものを訴えるには十分なゴルフコースである。

しかし、この後突如、ミュアヘッドはゴルフコース設計の世界から姿を消す。

ストーン・ハーバーゴルフクラブは、10年の空白を経てゴルフコース設計に戻ったころの設計である。10年の歳月は、この設計家をどのように変えたのか?

波のようにうねるアンジュレーションがきついフェアウエイだろうか?大胆に組み入れるウォーター・ハザードだろうか?

それは、表面的なものでしかないだろう。そう言いたくなるのは、彼が日本にその答えの断片を遺しているからだ。

富士クラシック。葛飾北斎の『富嶽三十六景』をイメージしたとされるこのコース。ここでのラウンドは、ほぼ全てのゴルファーに忘れられぬ記憶として残される。改めて紹介するのがはばかれるほどに有名となった17番。ミュアヘッドは、『富嶽三十六景』の代名詞、「神奈川浪裏」を大胆にグリーンのデザインに取り入れている。

しかし、その大胆さの一方で富士クラシックのコース全体のイメージは「地味」である。地味だと感じる理由は、新陽カントリー倶楽部の存在があるからだ。

これでもかとゴルファーに見せつける大胆なレイアウト。視界に飛び込む強烈な印象を刻む「新陽」の各ホール。この強烈なイメージの洗礼を受けると、「富士クラッシック」は地味な印象を受ける。

ミュアヘッドは、なぜこのようなコントラストを描いたのだろうか。答えは「ゴルフ場がどこにあるか」にあると私は思う。

富士山を臨む「富士クラッシク」は、富士山の存在こそが主である。大胆なデザインは平面化させて、3次元的なデザインは富士の存在を前面に出す。視点は遠くの富士から徐々に手前に移るようにする。「地味」なデザインは、そのような仕掛けに基づくものではないか。一方、そのような背景がない「新陽」は、リンクス風バンカーなど立体的なデザインを豊富に入れる。

ミュアヘッドが大切にしたのは、自らのイメージと景色との融合ではないだろうか。そう考えると、この設計家の自己主張の意味が見えてくる。ゴルフ設計家の自己主張。ゴルフ場は、その存在が巨大な造形物であるが故に、周囲の風景と切り離せない宿命をもつ。であるならば周囲の景色とのマッチングは細心の配慮が必要となる。富士と新陽の異なるつくりは、10年の空白の末にたどり着いたこの設計家の境地が凝縮されているように思えてならない。

哲学や心理学にも造詣が深かったされるミュアヘッド。あらゆる要素が溶け込んだ彼の思想が詰まったコースでプレーすることの本当の楽しみは、彼の思考回路に入り込む楽しさなのかもしれない。


YAMAHA。技術で勝って、ビジネスも勝て!

2012年は、「ヤマハ」のシーズンだった。同社と契約する賞金王、藤田寛之プロと谷口徹プロが大活躍。技術に一家言ある2人のプロが愛用するクラブ。職人気質のメーカーの努力が結実したシーズンでもあった。しかし、ビジネスとしてヤマハを見ると、脆さが気になるメーカーでもある。好きなメーカーだけに残念だ。ビジネスとしてのヤマハの課題は、現在多くの日本の製造業が抱える課題でもありそうだ。

「ヤマハは嫌いだ」と口にするゴルファーにあまりお目にかかったことがない。たぶんあなた自身もあなたの周辺のゴルファーも同じだろう。職人気質を好む日本人にとって、技術に徹底的にこだわるヤマハのメーカーとしての姿勢は、シンパシーを感じるに値するメーカーなのだ。ヤマハが「機会があれば」チャレンジしたいメーカーの一つであることは、間違いないだろう。

では、あなたのゴルフクラブセットの中に、ヤマハのクラブは入っているだろうか?

「イエス」と答えたゴルファーは、きっとそれなりに満足しているはずだ。ヤマハの製品は、それくらいの実力がある。「ノー」と答えたゴルファーの理由の大半は、「まだ、ヤマハを手にしてみようという気にならない」ということだろう。国内2強のD社、B社を愛用しているゴルファーならば尚のことだ。言い換えると、ヤマハは潜在的な市場を国内に抱えていることになる。であるならば、「魅力的に見える隣の芝生」として自社の製品をより青くみせる努力はビジネス的に重要な戦略となるだろう。

それが「inpresX」ブランドの育成ではなかったのか?

「inpresX」シリーズの2013年の展開は、このRMX(リミックス)が担うのだが、その新作発表会で前面に出たコピーが「解体」であった。ヘッドとシャフトを別売りすることから「バラバラ」にするイメージからそれが来ているのだろう。現状に安住せず、新しい試みをするヤマハらしさであるし、こういう挑戦は大歓迎である。

ただ、問題はメーカーが発するメッセージがなぜ「解体」なのだろうか?ということである。

私達ユーザーは、そのバラバラに売られたヘッドとシャフトをどのように組み合わせ、自分のゴルフに役立てていくかにこそ関心があるのだ。「解体の先」こそが、私達にとって重要なのだ。もちろん、興味があるゴルファーやコアのユーザーは有料雑誌を買って、使い方をマスターしようとするだろう。しかし、「これからのヤマハユーザー」にとってはこのような訴え方では、ヤマハの敷居は高く感じるのではないか。

「日本の家電メーカーの機能は、むずかしすぎるものが多い。多機能についていかない消費者も増えている」通販大手ジャパネットたかた(長崎県佐世保市)の高田明社長は、数年前にこう発言している。多機能を謳う一方で、ユーザーにとって理解の難しい機能を搭載する日本の家電メーカーの姿勢に疑問を呈している。販売の最前線に立つ同氏にとって、この疑問はより切実に感じたのだろう。新しい機能がユーザーにとってどんなメリットがあるのか?それをはっきり示さない、示せない日本の家電メーカーのうち数社は数年後の現在、巨額赤字に転落した。同氏の発言は、この未来を予測していたかのようだ。

ヤマハに限らず、日本のメーカーの技術の追求は、決して衰えさせてはならないストロングポイントである。しかし、これからの時代は、それだけでは不十分である。自社の製品を使えば、どのような未来が待っているかを強く訴える必要がある。その機能が、いかに新しく、いかにユーザーの未来を変えることができるのか。それを強く示す必要がある。例えば、アップル社のiPadの企業向けCMはそれが端的に出ている。自社製品を手にしたときのイメージをいかに喚起させることができるか。そのアピールがより強く求められる時代になったのである。

私は、ヤマハのメーカーとしての潜在能力を高く評価している。一方で、日本のメーカーの多くが抱える問題を克服できていないとも感じている。「inpresX」ブランドは、ぜひ大切に育ててもらいたい。発するメッセージは創造的であるべきだ。「解体」では未来を語っていることにはならない。私達は、「inpresX」を使えば、こんな楽しいゴルフライフが待っているという未来が見たいのである。


プロの思考、プロの技。L.ドナルド@宮崎ダンロップフェニックス

高度化された戦略の結晶であるプロの業(わざ)。ケーススタディの手法を用いて、これをアマチュアゴルファーにも役立つ法則へと導いてみよう。

今回は、ルーク・ドナルドのダンロップフェニックストーナメント3日目を採り上げる。初日-6、2日目-7のロケットスタートで首位を独走したドナルド。しかし、3日目は、パープレーを強いられる展開に。しかし、この3日目にこそ、彼が世界のトッププレーヤーである真髄が詰まっていた。

安定性の根源とは何か?

ルーク・ドナルドといえば、アイアン。「ショートゲームが自分のプロゴルファーとしての50%を占める」と言い切るほどの絶対的な強み。道具の進化に伴い、長くなる一方の欧米のコースセッティングにあって、「飛ばないドライバー」で結果を出し続ける稀有のプロゴルファー。

彼の生き様から届くメッセージは、「自分の強みを伸ばしなさい」だろう。まずは、これを肝に命じたい。

今回の話は、ここからである。
11月17日(土)。宮崎は雨だった。強風と豪雨の悪コンディション。数時間の中断を挟むほどの雨。多くのプロゴルファーがスコアメイクにてこずる展開。この日に限っては、ドナルドも同じだった。3バーディー、3ボギーのパープレー。2日目までの-13の結果から考えると急ブレーキがかかったといえるだろう。

数字は正直だ。平均ストロークは当然として、平均パット数、パーキープ率、パーオン率も軒並み2ケタ順位。悪コンディションと自身のショットの不調。それがよく表れている。しかし、そんな状況下でドナルドは、信じられない数字をたたき出していた。

フェアウェイキープ率。これが堂々の1位タイだったのだ。

この数字が何を意味するのかは、最初のドナルドの強みと絡み合ってくる。アイアンの強み。これを活かす為の絶対条件は何か?それはミドルホール以上ならばフェアウェイキープである。この前提が覆れば、自分の強さを発揮することはできない。ラフからベストなアイアンショットは打てないからだ。ドナルドは、このような状況下にあっても、正確にフェアウェイを守れるドライバーショットを持っていたのである。

そこで学ぶべきプロの業(わざ)。
自分の強みを知り、それを磨く。まずはこれが大切なことだ。そして、それと同等、いやそれ以上に自分の強みを活かす舞台を整えることを重視すべきだ。もしあなたが、ミドルパットが得意なゴルファーだとしよう。それにも関わらず4オンばかりするようでは、その強みを活かすことはできない。確実に2、3オンできる技術をも重視するべきなのだ。

自分の強みを磨く。その「壱の矢」を活かす為に、「弐の矢」の技術を磨く。自分のスタイルは、そのようにしてつくりあげていくべきなのである。
ルーク・ドナルドの安定性の根源。それは、アイアンの強みを活かす、ドライバーショットの技術の高さにあったのである。


「みんなで共有、みんなの知恵」

IMGP2483 / russelljsmith

10月号アンケート「教えてください!アイアンの得意な飛距離」にたくさんのご回答ありがとうございました。お寄せいただいた皆様のご意見は、実戦で試行錯誤されたテーマだっただけに含蓄に富むものばかり。それで今回、「みんなで共有、みんなの知恵」という特集記事としてご紹介いたします。

「飛距離が半端な場合、どのように調整していますか?」

今回のアンケートでは、このテーマが白熱!読者様の知恵を拝見させていただきました!

まずは、一番の多数派となったのが、
「番手を上げて調整」(ゴルフの達人様・奈良県)
に代表される「番手上げ」の皆さん。番手を上げる場合、距離を短く詰めないといけません。そこでの工夫で2つのグループに分かれました。

「番手を上げて8割程度のスイングをする」(はし様・長崎県)
「番手を上げて軽く打つ」(バラード様・東京都)の皆さんの工夫です。
ラウンド中に力を抜くショットをすることで自然に、力みを減らす工夫にもなっていますね。

もうひとつのグループは、
「番手を上げてトップを小さく」(sanagiman様・愛知県、tora様・兵庫県、星王子様・茨城県)の皆さん。
この工夫が、一番の支持を集めました。「番手を上げてトップの高さで調整」(ヒデさん様・大阪府)するメリットは、スイング強度を一定に保つことができることでしょう。安定感のあるコンパクトなスイングを心がけておられる印象です。「番手を上げてフォローを小さく」(ぴーすけまろん様・北海道)は、そのよい例かと思います。

次の支持を集めたのは、
「スイングのふり幅」(ローズマリー様・兵庫県)、
「フリ幅で調節する」(まさるちゃん様・長野県)の皆さん。
ふり幅調整のメリットは、スイングリズムの安定。スイングリズムは、多くの女子プロゴルファーが大切しているとても重要な考え方。「番手は変えずスリークウォーター」(テツシ様・神奈川県)、「トップ位置を変えて(調整)」(ikemenn様・大阪府)のように自分に合った幅を掴めれば強い武器になりますね。

また、フルスイング重視で工夫をされている皆さんも多くおられました。考え方は、2つに分かれました。
「短く握る」(sonq様・東京都)、
「グリップを短く持ってフルスイング」(ブロ様・富山県)の皆さん。
短く持つメリットのひとつは、前傾姿勢の意識が高まること。ブロ様は、気をつけていることとしてヘッドアップを挙げておられます。注意することと工夫が一体化した選択ですね。

もうひとつは、
「番手を下げてフルスイング」(シンジ様・東京都、ぴかそ様・滋賀県)。
アイアンショットはどうしてもフルスイングが、できにくいもの。「番手を下げて振り切る」(たけちゃん様・熊本県)の「振り切る」に想いがこもっておられる印象をもちました。

工夫は、ひとつとは限りません。複数の工夫を組み合わせるハイブリッド派の皆さんもおられました。
「ピンの位置と風を考えながら番手を上下させる」(ボギーパパ様・青森県)、
「スイング幅を小さくしたり、短く持ったりしている」(まささん様・三重県)、
「番手を上げてスイングの大きさを調整」(megu様・大阪府)の皆さん。
あらかじめ決めている工夫から組み合わせる方と、
「その時の、状況で決める。(コンパクトにスイング、短く握る、スライス、フックで打つ)」(akihiro様・東京都)
のように、まさにその場で決める方がおられました。工夫の引き出しを増やしておくと幅が広がりますね。

工夫に正解はないと思います。年齢、性別、体格、得意のクラブなど考慮しなければならないたくさんの要素があるからです。その中で自分にとってのベストやベターを探していくこと。これもゴルフの面白さの一つではないでしょうか。読者様のお知恵を拝借して、そう痛感しました。アンケートにご回答下さった読者様、ありがとうございました。
(2012年11月掲載)


GO!宮崎 GO!

朗報は突然やってきた。ルーク・ドナルド参戦!久々の大物選手の来日。舞台は「フェニックスカントリークラブ」。11月は宮崎の季節だ。ルークが参戦する「ダンロップフェニックストーナメント」が15日(木)から。さらに国内女子ツアーの最終戦、「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」が翌週開催。見るもよし、プレーするもよし。秋はスケジュールに「宮崎行き」を書き込んでみてはいかがだろうか。

★チャンピオンコースでプレーする!
秋から春先にかけて維持されるプロ仕様のコースセッティング。難コースをより難しく仕上げられたコースでラウンドする。そんな体験ができるのは、この時期の宮崎の最高の魅力である。
フェニックスカントリークラブ
(宮崎県宮崎市大字塩路字浜山3083)
不死鳥は松林に棲み、太平洋からの海風に乗って舞う。物語は9章立ての3つのストーリー。あなたは物語を紡ぐ主人公だ。クラブハウスに入るとすぐにあなたは光を奪われる。「ダンロップフェニックストーナメント」と共に歩んだこのゴルフ場の歴史を刻んだ荘厳なロビー。物語はここから始まる。住吉・日南・高千穂の3つのコースレイアウトは、驚くほどシンプルだ。当然だろう。このコースの最大のハザードは、不死鳥の愛した松林と海風だからだ。だからラウンドは「悩む」ことと共にある。低い弾道で海風を松林に守ってもらうか、海風を読んで松林を越える高い弾道で勝負するか。世界のトッププロと思考を共有する至福。それがこのゴルフ場の最大の魅力なのである。

宮崎カントリークラブ 
(宮崎県宮崎市大字田吉4855-90)
市内を流れる大淀川を挟んで北側に位置するフェニックスゴルフクラブに対して南側、宮崎空港に隣接する位置にこのゴルフ場はある。松林に囲まれ、強い海風が吹きつける点ではフェニックスと同じだが、この2つのゴルフ場の趣は大きく異なる。洋芝にこだわるフェニックスとは対照的にここは、高麗芝にこだわっている。高麗芝の鏡のようなグリーンは、芝目の微妙な違いによって右へ左へとボールを誘惑する。1953年から刻んだこのゴルフ場は、小さな努力を積み重ねて現在の地位を得た。豪華なつくりのゴルフ場とは、異なる落ち着いた佇まいこそが名門の証である。

★宮崎市近郊の良質ゴルフ場でプレーする!
宮崎大淀カントリークラブ
(宮崎県宮崎市大字長嶺字唯ヶ迫1021)
このゴルフ場で「普通」なのは、料金だけである。行き届いたコースメンテナンス、楽しいラウンドをサポートするキャディ、そして何よりもコースセッティングのワクワク感。左ドックレッグから突然視界に現れるつり橋。池越えの粋な演出の7番がそれを象徴している。1990年代開場の短い歴史ながら、名門ゴルフ場に囲まれた宮崎で揉まれたこのゴルフ場のクオリティは、明らかに「普通を超える」。この水準のゴルフ場を「普通」な料金で楽しめる。ここは「ゴルフ天国宮崎」をある意味証明する場所なのである。

青島ゴルフ倶楽部
(宮崎県宮崎市大字折生迫字大谷4180)
このゴルフ場でプレーできることは、間違いなくゴルファーとして幸福なことである。美しい。とにかく美しい。たしかに風光明媚で知られる日南海岸にあるゴルフ場である。美しくないはずはない。しかし、このゴルフ場の美しさはそれだけでは説明がつかない。視界に入るすべての景色が美しいのである。決してボールが飛んでいかないはずの場所も手入れされているこだわり。やはり美しさは細部に宿るのである。1番ホールに立ったとき、泉のよう湧き出る幸福感はこの場所に立たない限り味わうことはできない。
(2012年 10月掲載)


「100を切る トライアングル 」

GOLF-MODEは、グロス100切りを目指すゴルファーを全力応援!
毎回1つのテーマに対して、(1)意識を変える (2)行動を変える (3)習慣を変える
の3つのアプローチで「あなたのゴルフを変える」をサポート。この3つのアプローチが形成する三角形(トライアングル)で目標達成を目指します!

第1回のテーマは「易しめウッドで基本を磨こう!」です。

New Driver / jdog90

◆STEP1<<(1)意識を変える (2)行動を変える (3)習慣を変える>>
ゴルフは、今を楽しみ、そして上達を楽しむスポーツです。100を切ることを目標にする頃は、そのころの楽しみ方を通じて、上達の芽を育てていきましょう。
さて、ドライバーはミスを多発しやすく、リスクの多いクラブ。スコアメイクの為に割り切って封印しましょう。ですからメインクラブを、3Wと5Wとし、これに7(9)WとUTを組み合わせて長~中距離までをカバーします。短距離はウェッジ系のAW(PS)/PW/SWでまとめます。FWやUTはミスの少なさと方向性の安定が魅力。その特性をスコアメイクに活用します。

ミドルホールでは、3W→5W(UT)→AWで3オン狙いが基本の型。ロングホールでも4オン狙いで十分ですから3Wで第1打を打っていきます。また、アイアンはその間の距離の隙間を埋めるクラブと割り切ります。

☆易しめのウッド系を中心にミスをしにくいクラブで攻める!と意識を変えましょう。

◆STEP2<<(1)意識を変える (2)行動を変える (3)習慣を変える>>
メインのクラブを変えると必然的に練習も変わります。ウェッジ系で50~60Y以内のアプローチ練習が重要になってきます。実戦でFW、UTを中心に使い、アイアンをなるべく使わない選択をしますから、ボールをグリーンに乗せる役割は、ウェッジの仕事になるからです。ですからアプローチ練習には十分時間を割きましょう。

☆FWやUTは「ボールをグリーンそばまで運ぶクラブ」、ウェッジ系は、「ボールをグリーンに乗せるクラブ」と理解し、このクラブでの練習量を増やしましょう。


Retief Goosen contemplating his approach shot at 10 (18w). / Hone Morihana

◆STEP3<<(1)意識を変える (2)行動を変える (3)習慣を変える>>
FWやUTをメインに据える理由はもう一つあります。それはFWやUTはレベルブローで打つクラブであるということです。レベルブローで打つクラブをじっくり使い込んで、これをマスターするという狙いがあるのです。ゴルフでは、クラブによってスイング軌道が変わるのはリスクです。出来る限り同じスイングを再現できることは上達の重要な要素。レベルブローのスイングを通じてこの基本の型をつくっていきましょう。

☆FWやUTを多用し、レベルブローでのスイング量を増やす習慣をつけましょう。そうすると、ドライバー、アイアンの打ち方に応用できるレベルブローでのスイングの型が出来てきます。

これは、標準的なゴルフ場で(パー)72+(ボギー進行で+1×18ホールで)18+αで100ライン切りを目指す戦略です。また、レベルブローが上手になったころがドライバー、アイアン解禁のタイミングです。


「プロの思考、プロの技。タイガー・ウッズ@サンフランシスコ 全米オープン

高度化された戦略の結晶であるプロの業(わざ)。ケーススタディの手法を用いて、これをアマチュアゴルファーにも役立つ法則へと導いてみよう。その第2回目(1回目はこちら

今回は、6月にオリンピッククラブ・レイクコースで行われた全米オープンゴルフ3日目、タイガー・ウッズの放ったリカバリーショットを採り上げる。舞台は14番ミドル。緩やかな左ドックレッグで左側からせり出した林が特長的なホール。アイアンで右方向へ打ち出そうとしたタイガーだったがミスヒットし、ボールは左へ。ラフのファーストカットで止まったボールは、林によってグリーン方向が塞がれてしまった。グリーン右側のバンカーがかろうじて見える状態。グリーンまで約150~160Y。フックをかけなければグリーンには乗らない。ここでタイガーは、基本に忠実であるために意外なクラブを選択をする。その意図は何だったのだろうか。

まっすぐ打ったとしてもバンカー。絶対条件としてフックをかけなければならない。だからまずは、フックをかけることを重視しがち。低く打ったほうがリスクも少なく、コントロールもしやすい。だが、タイガーが重視したのは高さだった。選択したクラブはPW。高くそして、「あまりフックをかけずに」放たれたボールは、グリーン右奥へ引っかかり、傾斜を利用してピンそばまでボールは転がったのだった。(全米オープンの動画はこちら →saturday,june,16,2012を選択し、Woods Highlights(最上段右端)で14番ホールのショットをご覧いただけます)。

そこで見えてくるタイガー・ウッズのプロの業(わざ)。それは、リカバリーショットであったとしても、セオリーという基本を重視することだ。

ミドルホールの第2打は、高く打ち、スピンをかけてグリーン上でボールを止めるのがセオリー。タイガーは、そのセオリーを忠実に守り、そこから独自の技術でショットをアレンジしたのだ。リカバリーショットは、状況打開を重視するあまり、ショットの難易度を自分で上げてしまうことが多い。無理なショットを無理をして打ち、さらに悪い結果を招くという負のサイクルに陥りがちだ。タイガーのこのショットは、リカバリーショットにおける基本的に考え方を示している。それは「セオリーに沿ったリスクの少ない選択をすることの重要性」だ。ゴルフの基本的な思想はここにある。タイガー・ウッズほどのレベルに到達した選手であってもそれを軽んじるような行動を決してしないのである。


「プロの思考、プロの技。有村智恵プロ@福岡フンドーキンレディース」

苛烈なトーナメントの世界を生き抜いていくために身につけられたプロの業(わざ)。これは、高度化された戦略の結晶である。これをケーススタディの手法を用いて分析。そこから出る結論をアマチュアゴルファーにも役立つ法則へと導いてみよう。

今回は、有村智恵プロ(日本ヒューレットパッカード)のフンドーキンレディース初日。15番ホールから起こった3連続バンカーの場面を採り上げる。特に3ホール目の17番ミドルは、第2打が目玉になり、第3打目をバンカーから出せない苦しい展開。3ホール連続でのバンカーは、プロであっても精神的にきつい場面。有村は、この危機を最小限に食い止めるどんな工夫をしていたのだろうか。

謎を解く鍵は、大会前のコメントにある。「厳しいコース。小技といった技術力が試される」。そう宣言して臨んだ今大会。アップダウンのきつい丘陵コースで知られる福岡カンツリー倶楽部和白。打ち上げ、打ち下ろしの距離感をあわせにくいことを見越しての想定だった。うっすらと見えてくる自分の未来図。その「想定」とともに有村は、可能性としては「十分ありえる」と覚悟して、3ホール連続のバンカーショットと向き合っていたのだ。

さらにその想定から有村は対策を打っていた。それはドライバーの安全運転である。このコースでの主戦場はグリーンへのアプローチ。第1打を曲げては次の展望を開けない。ドライバーで無理をしない選択は、16番、17番、18番の第1打がフェアウェイを捕らえるという結果をもたらした。

精神的な備えは、十分な心の余裕を残していた。高い集中力で危機に対処していた有村は、17番の第4打目、2回目のバンカーショットは、ピンそば約30cmのファインショットを見せたのである。このホールをボギーで逃れ、この3ホール連続バンカーの危機をトータル+1で凌いだのである。

そこで見えてくる有村のプロの業(わざ)。それは、「自分に何が起こるのかを予測する力」であり、「その予測に対する備え」といえる。自分に起こることを正しく理解し、それに対して備える。それは、ゴルフのラウンドにおいて、アマチュアゴルファーにも求められる力でもあるはずである。(文中敬称略)


ルーク・ドナルド 短所を組み込む巧みな戦略


ドライバーアベレージ280Y。ルーク・ドナルドというプロゴルファーを語る上で、欠かせぬ数字だ。身長175cm、体重75kg。日本人と変わらない小さな体躯。300Y越えが当たり前の世界のプロゴルフ界において、PGAツアー選手の平均にも届かない、「飛ばない」ドライバー。しかし、彼のプロゴルファーとしての戦略は、ここから組み立てられている。今号の冒頭記事にもあるように、ルークのスイングは、飛距離を犠牲にした安定型のスイングである。一見すると、不利に見えるこの戦略は、どこにメリットがあるのだろうか。

それを読み解く数字がPGAの統計にある。ルークは、「パー5ホールでのバーディ(かそれ以上)のランキング」で上位にありながら、「イーグル率」では、下位に沈んでいる。この矛盾する数字は、ルークが5打上がりのホールで、確実にバーディを拾っていることが見えてくる。さらに、「パー3のホールでのバーディ(かそれ以上)のランキング」でも上位に位置している。ここから推察できることは、ドライバーの飛距離で無理をしない戦略を取ることで、余計な精神的ストレスを溜め込まず、ショートホールとミドルより長いホールでは2打目以降に集中の度合いを上げているのだろうということである。

他の選手と不利な点は無理をして競り合わず、自分の勝負できるところに集中力を残す。この戦略は、「最終日のスコアのランキング」で首位をとっていることで結実している。結果、トップ10入りの回数でも上位に位置することになり、PGA、欧州両ツアー賞金王を手繰り寄せたのである。

ゴルフは己を知り、その上で戦略を立てることが重要なスポーツだ。ルークの賞金王という事実は、世界のゴルファーにこのメッセージを届けたのだ。



Love It or Hate It / Dave Hogg

国内男子ツアー、20歳代選手が沈黙している。20歳になった、石川遼(パナソニック)、池田勇太(日清食品)の二人を除くと、賞金ランキング上位には外国人選手と30歳代の選手が並ぶ。ベテランの活躍は喜ばしい限りだが、この光景はやはり異様だ。20歳代の選手が、不動裕理などのベテランを脅かしている女子ツアーと比べるとあまりも対照的だからだ。

逸材がいないわけではない。2日間トーナメントとなったとはいえ、ツアー初優勝を飾った諸藤将次(セガサミーホールディングス)は26歳。他にもドライビングディスタンスのランキングでは、伊佐専禄(フリー)、津曲泰弦(千葉夷隅GC)らの20歳代の選手が並ぶ。彼らは、もっと結果を出さないといけない選手たちなのである。

今季、国内男子ツアーの試合数は女子よりも少ない25試合しか組まれていない。さらに、石川遼が欠場したある大会では、スポンサーが石川欠場に不満を漏らし、撤退を示唆する事態にまで発展。スター選手不在は、深刻な問題になりつつある。20歳代の選手はもっとベテラン選手を脅かし、結果を出さなければならない。私たちは、国内ツアーを担ってくれる若手の登場を待っているのである。
(文中敬称略、記録は2011年10月当時)


有村智恵、物語を紡ぐ強い星


有村智恵(日本ヒューレットパッカード)は物語を持っている選手である。熊本県に生まれ、父の手ほどきを受け、ゴルフを始める。「憧れの」宮里藍の背中を追いかけて東北高校に進学。プロに転向し、09年に拠点を東京に移してブレイク。この選手の履歴には、ゴルフとその周辺に人々の記憶の手がかりとなる物語が存在している。

2011年。今年も新たな物語が書き加えられた。7月、スタンレーレディスゴルフトーナメント第1ラウンド。 パー5の8番ホール。UT3番で放った第2打のボールは2バウンドし、カップに吸い込まれた。LPGAの統計で1万7千あまりのラウンドで1回起こる確率のアルバトロス。そしてパー3の16番ホール。8番Iでピンをまっすぐ狙ったボールがカップイン。「同一ラウンドでのアルバトロスとホールインワン」の達成。三万年に一度しか起こらない確率の偉業。一瞬にして、ゴルフファンを歴史の目撃者にしてしまった。今季の有村は、シーズン終盤こそ怪我に苦しんだものの、夏から秋にかけて3勝。ツアープロとしての存在感も示した。

小さな身体をフルに使ったダイナミックなショット。正確なアプローチ。ここぞというときに見せる勝負強さ。そしてプロ選手として、あって損にはならない愛くるしいルックス。そういった「基本」の上に積み上げる、ほかのプロとは違う「物語」。人々を惹きつけ、女子プロツアーを引っ張る23歳。有村智恵のプロゴルファーとしての物語は、始まったばかり。有村はこれからどんな物語を私たちにみせてくれるのだろうか。(文中敬称略)


GM plus(+)Biz SRIXONの海外展開の行方


「SRIスポーツ(神戸市)が、米国シェア5位のクラブメーカー、クリーブランドゴルフを買収」。これは今から4年前、2007年のニュースだ。

ブリヂストン・スポーツ(BSS)と国内双璧のSRIスポーツ。製品の高いクオリティで厳しい日本の競争に勝ち残ってきた同社。それだけにアメリカの既存ブランドの買収は驚きだった。

国内市場に重点を置くBSSに対して、積極的に海外展開を行ってきたSRIスポーツ。06年には、J・フューリック(アメリカ)との契約に成功。フューリックは、SRIXONに転向後、躍進をとげる。2010年の米国ツアーのクライマックス、「ザ・ツアー選手権 presented by コカコーラ」で優勝。満面の笑みで「FedEx Cup」を掲げる姿はその象徴だ。J・フューリックの存在は、アメリカのゴルファーに「SRIXON」の存在を知らしめることに成功し、「SRIXON」のブランド浸透戦略に着実な成果をもたらしたといえる。

SRIスポーツは、03年に住友ゴム工業から分離独立。06年に東証一部に上場。「SRIスポーツ」としての自立が求められる07年当時、「海外でのSRIXONブランドの構築」を「ゆっくり着実に」できる環境になかったのかもしれない。

「ダンロップ」ブランドは日本・韓国・台湾のエリア限定のライセンス系ブランド。「ダンロップ」が使えない、欧州・アメリカ市場で、「SRIXON」という新興ブランドのみの戦略は、リスクが大きいという経営判断があったのだろう。クリーブランドゴルフの買収はその意味で、現実的な選択といえた。しかし、現在の視点から07年のクリーブランドゴルフの買収のニュースを見ると違和感は、やはり増幅されてしまう。

SRIスポーツは、今後海外で、「Cleveland Golf」と「SRIXON」をどう使い分けていくのだろうか。SRIスポーツのブランド戦略は岐路に立っているのかもしれない。
ゴルフにおいて欧州・アメリカ市場に新たな「ジャパン・ブランド」が構築できれば、多くの製造業系企業に力強いメッセージとなるだろう。そういう意味で、SRIスポーツのブランド戦略は多くの企業にとって注目するモデル・ケースといえる。


マレットパター、高い直進性ゆえの代償


マレットパターの4要素。それは、フェイスバランス(シャフトを支点にしてバランスを取ると、フェイス面が水平となり天井を向くこと)、まっすぐの方向線、高い慣性モーメント。どれも、ボールをまっすぐ転がす仕掛けである。「直進性」こそが、マレットパターの本質である。「直進性」という多くのゴルファーの望みを叶えたマレットパターの技術。そして、その根幹は、4つ目の要素、「重心深度の深さ」にある。重心位置をフェイス面ではなく、ヘッドの奥に入りこませたことで、パターを引くとき、ボールを押し出すときにまっすぐな軌道を「より確実により簡単に」を可能にしたのである。ただ、ある代償とともに…。

10年ほどマレットタイプを使っておられたという、福岡のグリーンひろしさん。この方のコメントは、マレットタイプの問題を射抜いている。

「ピンタイプは旧式」と勝手に決めていました。(中略)3ヶ月前までは、流行の「ロッサ スパイダー」を使っていましたが、何故かダフリが多くなり思い切って、昔使っていた「ピン」のグリップを新しくして使い始めたところ、非常に良いのです。自分なりに分析してみたところピンはアプローチで使うアイアンとフィーリングが通じていて「距離感」が合い易いようです。

重心深度の深さは、「打った感覚」をゴルファーの手元から奪うのだ。特に、インパクト時の一瞬で調整する微妙な距離の感覚は、重心深度が深いと確実に狂ってしまう。マレットパターが生み出した画期的な技術のコンビネーション。しかしそれは、「距離感」という、これもまたパットに欠かせぬ要素の犠牲の上に成立したのだ。払った犠牲の大小は、パターを使う人間に左右される。パターは本当に難しい。心からそう思うのである。

 



これを手にした人はこのパターの虜になる。多くのゴルファーに「これは私に合っている」と言わしめる説得力。それがスコッティ・キャメロンのパターだ。

カリフォルニア州サン・マルコス。ロサンゼルスとサンディエゴのほぼ中間に位置するこの町にある「スタジオ」の主、スコッティ・キャメロンは、カリフォルニアのサーファー文化をこよなく愛する1962年生まれのアラフィフ世代。

豊富に並ぶスコッティ・キャメロンの製品ラインナップは技術的に、デザイン的に徹底した追求の結果である。それは結局のところ、ゴルファーが言葉にできない「感覚」(フィーリング、タッチ)を独自の技術と理論で「具現化」することへのあくなき探求に他ならない。

2011年の販売ラインナップの「スタジオセレクト」「カリフォルニア」「スタジオセレクトコンビ」シリーズは、スコッティ・キャメロンのパターの進化の集積である。しかし、それはあくまで「現在までの集積」に過ぎない。03年~05年販売の「フューチュラ」シリーズに代表される個性的なパターの実験の延長線上に位置する現在の集積。これから生まれるのであろう新たなスコッティ・キャメロンのパターがその集積を書き換えていくのだ。

ツアープロだけでなくキャメロンクレイジーズとよばれる熱狂的コレクターや一般ゴルファーの声に常に応えていこうとする姿勢が、このパターを手にするゴルファーに「これは私に合っている」といわせるのだろう。50年代のロックミュージック、Tシャツ、古いバイク、そしてサーフボード。カリフォルニアのカルチャーをこよなく愛し、それに包まれる生活を送る姿は、たとえ似つかわしくなくてもそれは「マイスター」の姿に他ならないのである。

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