「理論」を売る。テーラー・メイド社「逆張り戦略」の極意。
2014年08月20日 category:ゴルファーニュース誰もが「右」を主張してるときに、「左」を主張すると当然に目立つ。人と違うことをする。
それが、自分の存在を目立たせる有効な手段だ。であるから、「逆張り」はいつの世にも、どの世界にもある話ではある。
しかし、ゴルフの用具の世界においては、結構なリスクである。
現在の日本メーカーのドライバーの主流構造は、高く深い重心+低いロフト角である。
そのようになっているのには、十分な理由がある。それは、
深い重心によって、直進性が高まり、ロフト角をとらなくてもフェースが開きやすく高い弾道を得られる。
また、高い重心によって、バックスピンが減らせるのだ。
つまり、ドライバーの飛距離アップの要件である、直進性、高弾道、低スピンが実現するのである。
であるから、たとえ業界の常識を覆す「低く浅い重心+高いロフト角」である商品が出たとしても、
世間のゴルファーの食指は伸びないであろうことは、当然に予想される。
しかし、テーラー・メイド社は、「SLDRシリーズ」をはじめとして、「低浅重心+高ロフト角」の商品を市場に投入した。
その是非は、論点ではないので、割愛するが、注目するべきは、テーラーメイド社の売り方である。
注視したいのは、同社が徹底した啓蒙活動に力を入れているということである。
常識を覆す「逆張り」は、一定の科学的根拠によって確立した主流と真っ向対立する。であるならば、自分たちの主張は、簡単には通らない。
だからこそ、それを通したいのならば、商品を売る前に、その仕組みを売りこまなくてはならない。
これが、効いている。
「逆張り」だからこそ、理論の訴求。皮肉にも、その戦略がこそが、聞くに値する論拠に見えてくるのである。
商品を売る前に、理論を売る。その理論に納得した消費者は、市場に「低浅重心+高ロフト角」の品は、テーラー社の商品のラインナップから買うであろう。
逆張りの商品を売るならば、逆張りの戦略が必要である。それを正しく分析し、成果としてつなげたテーラー社。
モノを売るということは、どういうことか。いろいろ考るに値する同社の戦略と言えるであろう。