ゴルフ練習場。身近で切実な大きな問題。
2013年08月09日 category:ゴルファーニュース
River Club driving range / Andrew Deacon
一定のゴルフキャリアをもつ東京在住のゴルファーにとって、「芝ゴルフ練習場」を知らない人はいないだろう。この練習場は、新橋、浜松町、三田、麻布に囲まれた芝公園内にあった。芝ゴルフ練習場と聞いて去来する感情は、愛憎共々ゴルファーによってさまざまだろう。
ただ、ここで白い放物線を描いたことのあるゴルファーならば、この練習場が、たとえステイタスを持つ場所であったとしても、たとえ他の追随を許さない好立地だとしても、ここの練習代は高かったという意見に賛同してもらえるだろう。現在の東京メトロ東西線の木場駅すぐにあった「ゴルフガーデン東陽」も同じく「出費の痛いゴルフ練習場」として有名だった。
ともに都心に立地していたという共通点をもつこのゴルフ練習場。今は、もうその姿はない。
芝公園 / Kentaro Ohno
東京に限らず、都市部在住のゴルファーにとってゴルフ練習場確保は切実な悩みになっている。平成13年にまとめた経済産業省の統計によると、東京都内のゴルフ練習場数は204。これは前回調査(平成11年)よりも16%の減少だった。当然のことながらこの数字は現在はもっと悪くなっているだろう。
ゴルフ練習場は、一定の敷地面積が必要なビジネスだ。都市部にある既存のゴルフ練習場は、かつて入手したまとまった土地を活用してなんとか存続しているのが現状だ。マンションや商業施設の建設用地として目をつけられたゴルフ練習場の土地を目当てに経営者が不動産開発業者から受け取った名刺が、束のようになり、廃転業を促す甘いささやきが耳元からなかなか消えない…そんな状況だろう。「芝ゴルフ練習場」も「ゴルフガーデン東陽」もゴルファーに相応の負担を求めるハイエンドのビジネスモデルだったが、結局は閉鎖の流れに逆らえなかった。
Diversey Golf Driving Range > Balls / danxoneil
人の動きを川の流れに例えるとゴルフ練習場は上流に位置する。ゴルフをしない人がゴルフを始める最初の接点のひとつがゴルフ練習場である。この上流が細れば、下流に位置するゴルフ場経営もプロゴルファーもレッスンプロも干上がってしまう。ゴルフ練習場の減少は、ゴルファー人口減少と直結するのだ。
ゴルフ人口が右肩上がりだったころは、ゴルフ場もゴルフ練習場もバラバラに動いていても問題はなかっただろう。しかし、今はお互いが自分たちのビジネスを発展させる仲間としての意識を持たなければならないと感じている。ゴルフ界の共通の利益を掘り起こすという観点で連携する動きが活発化することを期待せざるを得ない。
先の2つのゴルフ練習場。たとえ、1球30円近くもするボール代であっても、やはり存続してもらいたかった。これも先と同じく賛同してもらえる意見ではないかと思う。なくなってしまえばもう、二度と都心には、ゴルフ練習場はできないのだから。