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「心理と身体」


IMG_9318 / K8tilyn

今回は、人間の心理と身体の動きの話をしよう。

プロ野球の投手にとって、コントロールは生命線である。バッターから遠い位置になる外角へのコントロールは、特に重要である。一軍に定着できない投手は、このコントロールが不安定だ。2ボール、2ストライクといった勝負どころで、ストライクゾーンから大きく外側へボールをそらす投手の姿をプロ野球中継でよくみかける。当人は、外角の際どいところへ投げているつもりなのだろうが、意に反して明らかなボール球になっている。

なぜ、このような結果を招くのか?このメカニズムを理解できると、ゴルフにも応用することができる。今回は、そんな話である。

あなたは、スライスラインのパッティングショットのときに、カップのどの位置を狙っているだろうか。

「スライスラインは右にボールが曲がるので、カップの左を狙う」

そんなゴルファーが多くないだろうか?理屈としては、全くもって正しいロジックであり、もしそれで十分な結果が得られているのならば、それはそれで問題はない。今回は、それでうまくいっていないゴルファーへ向けて話をしたい。

カップの左を狙ったにも関わらず、うまくいっていないゴルファー。多くは左に外していないだろうか。

長い距離であれば、ラインの読み違えという可能性もあるが、2m前後の距離のパットならば原因は違うところにあると考えるべきだろう。この原因が先程述べたプロ野球の投手の外に大きくボールをはずす原因と重なるのだ。

人間というものは、心理状態の変化によって身体の動きが変化するものである。「外角のストライクゾーンに投げたい」「スライスラインではカップの左側に狙いたい」という欲求が、身体の動きに変化をもたらす。人によっては、それがより強い結果として反応してしまうことがあるのだ。そのことが「望まない」結果を招くことを理解しておくべきなのだ。

ここで考えをまとめておきたい。

心理状態によって、自分はどのような身体の変化をするのかを正しく理解しておくべきである。そうすれば、対処法が見えてくるのではないだろうか。

スライスラインでカップの左側に外すゴルファー。カップの右側を狙ってみてはどうだろうか。「右に外したくない」という心理状態による身体の反応が、ボールの軌道を左側に寄せるだろう。おそらくよい結果を導くはずである。


「リラックス」・・・永遠に訪れないユートピア


Cousin Joel in the pot bunker #golf #canoecreek / sharpener

今回は「平常心」の話をしよう。

最悪のスコアを出したときはどんな時か。体調不良や練習不足などよりも多く出る意見が、「嫌な人とラウンドしたとき」や「上手な人(下手な人)と回った時」である。心理状態をかき回され、ペースを乱されてしまった・・・。そんなゴルファーの心理状態が伺える。ゴルフはメンタル面が大きく影響を与えるスポーツであることがよく理解できる話である。

だから「平常心」を渇望するゴルファーは多い。
「練習場では上手く打てるのに、ラウンドではなかなかそれが出来ない」は、多くのゴルファーに共通する慢性的な悩みともいえる。もちろん、練習場とゴルフ場は違うことは、百も承知。ティーグラウンドに立ったときの独特の緊張感の中で、練習場と同じ平常心でドライバーを打てる方法はないものだろうか?そんなことを考えてしまうのはゴルファーとして自然なことある。

ここで考えをまとめておきたい。平常心は永遠に訪れない。それがゴルフである。

ゴルフは、メンタル面を揺さぶられるもので溢れている。スイングやパッティングのミスへの恐怖、バンカー、池やラフなどのハザード。ゴルフは、「揺さぶられる心」と向き合うスポーツであるのだ。この根本に目を向けておく必要がある。

この根本をしっかり理解できれば、ゴルフへの見方を変えることができるだろう。ゴルフは、揺さぶられる心理状態の中で、いかにベストに近いプレーすることができるかが問われるスポーツなのである。

見方を変えられれば、ゴルフの楽しみ方も変えることができる。

「緊張感」・・・。ミスやハザードへの恐怖からくる独特の心理状態は、ゴルフをしているからこそ沸き立つ感覚である。その緊張感を楽しまない理由はないだろう。

時間とお金をかけてでも味わうに値するもの。それは、自分の成長の実感である。高い緊張感の中に自らを晒し、その中で心の成長の芽を育てる。揺さぶれられる心と向き合うことは、その機会の少なさゆえに、とても有意義なことなのである。だからその経験から得たことは、人間を大きくすることにつながっていくのである。

「揺さぶられる心」を楽しむ。それは、大人になって人間の舌が苦味を味わうことができるようになることに似ている。揺さぶられることによって感じるネガティブの感情。それをも含めて「揺さぶられる心」を楽しんでほしい。それに慣れるとマイナスの要因のない「平常心」は、ちょっと物足りないと感じるはずである。


「距離への意識 」


Distance / Zdenko Zivkovic

今回は、距離への意識の話をしよう。
今、ゴルフでは距離を測る計測器が普及している。愛用している人も多いだろう。セルフラウンドが多い方なら必需品かもしれない。計測器は正確な距離が分かり大変便利だ。しかし、距離を測り、クラブの番手選びの参考にする使い方で留まっていては十分に使いこなせているとはいえないだろう。なぜならば、機械に頼れば人間が進化しないからである。少なくとも、まずは次のように使うべきである。

まずは自分で距離を判断して、計測器でそのズレを修正する使い方である。
距離の感覚は、最終的には自分で掴まなければならない。それは、理想主義的な考え方で言っているのではない。
ゴルフに限らず、人間が把握する数字は、その数字の意味を体感できなければ役に立たないからである。
打ち上げの100Yと打ち下ろしの100Yでは、全く意味が違うのは言うまでもない。その異なる100Yに対してどのように対処するか。そのスキルを獲得して、はじめて100Yの数字は意味を持つのである。つまり目測している時点からスキルの獲得は始まっているのである。そこでの成功、失敗の情報を受け取った脳は、正しい方法としての記憶と失敗の修正という作業を行う。それが向上へと導くのである。

ここで考えをまとめておきたい。
距離は自分で目測すべきである。

短い距離ならば歩測することが望ましい。距離の感覚を体を使って獲得し、その体の感覚をもとにクラブの番手を選び、正しいと判断したスイングをする。成功と失敗を正しく検討し、次に活かす。経験に意味があるのは、このサイクルが正しく機能するからである。そして、そのスタートは目測から始まるのである。計測器は、あなたの成長を見守る陰の存在であるべきであろう。


「レスキューショットをマスターせよ」


1st tee over car park / .waldec

今回は、ドライバーのトラブルについての話をしよう。
ドライバーショットのミスは、もっともスコアに影響し、もっとも心理的ダメージを与えるトラブルである。「次は、失敗を取りかえそう」というあせりもあり、ミスの再生産を起こしやすい厄介な問題である。2~3連続でミスを犯しながら、次も漫然とドライバーを打っているゴルファーは論外だが、ここでトラブルを回避する手段を持っているかどうかは、スコアメイクに直結する。

ここで提案をしておきたい。
スコアを安定させるためには、レスキューショットをマスターすべきであると。

考え方は、2つある。
ひとつは、スイングの強度を落とす、いわゆるパンチショットをマスターすることである。多くのアマチュアゴルファーは、このパンチショットを重視していない。また、練習も不足しているため、手打ちになるなどスイングが崩れていることが多い。ドライバーを持って軽く振るということは思いのほか難しい。まずは、練習のルーティーンに組み込んでほしい。

もう一つの考え方は、ドライバーを捨てるということである。ロングホールでは難しいが、ミドルでは十分選択できる考え方だ。FWやUTを使ってライン出しを重視したスイングを心がける。スイングの強度を落とす必要は無いが、自分のスイングの荒れ方には、注意が必要だ。迷ったら方向性の安定を重視してUTを使うべきだ。

プロであっても、4日間すべてのドライバーショットを完璧に打てるわけではない。スコアの安定のために「置きにいく」技術を身につけている。それが、ゴルフで飯を食うということでもある。トラブルを回避するレスキューショットを自分の技術として備えておくことは、結果としてドライバーショットの安定に繋がるはずである。


「IDクラブを吟味せよ!」


今月はクラブセッティングの話である。あなたは14本のクラブをどのように選んでいるだろうか。マストチョイスの1W、6-9I、PW、AW、SW、PTの9本を除いた5本にあなたのゴルファーとしての個性が潜んでいる。

FW、UT、ロングIのバランスこそがあなたのゴルファーとしてのidentification(身分証明)であり、その中でも、もっとも個性を雄弁に語るクラブが「あなたがあなたであるクラブ」といえるだろう。

そのクラブをIDクラブと呼ぶことにしょう。あなたのIDクラブは何だろうか?IDクラブは1本とは限らない。数本の組み合わせかもしれないし、別々に数本かもしれない。今月はこのIDクラブをぜひ考えて頂きたいのである。次にIDクラブの代表例をいくつかご紹介する。それはあなたの戦略と合っているだろうか?代表例を反射板として、あなたの戦略の深化を促したいのである。

3W・・・飛距離重視のアスリートタイプ。バーディを積極的に狙う攻めの戦略。
5W・・・ウッド系をうまく操るタイプ。安定性の高い第二打こそが生命線とする戦略。
7W・・・中距離重視のスキルタイプ。飛距離不足を技術で補う巧みな戦略。
4~5I・・・ロングIを打ちこなす職人タイプ。実践の結果を重視し、経験から積み上げる戦略。
UT2~3本・・・ウッド系を避け、距離を打ち揃えるタイプ。全体的なバランスを重視する戦略。
AW2本・・・ショートゲーム重視タイプ。アプローチからパターを主戦場とする戦略。

ここで考えをまとめておきたい。

あなたのIDクラブこそが、あなたのゴルファーとしての戦略の根幹である。であるから、それが徹底した吟味によって選ばれているかどうか?それは大変大きな意味を持つ。それをあいまいにしてのスコアアップはありえない。年齢、身体的特長、スイングの長所欠点・・・。あらゆる状況をすべて考慮して、IDクラブが選ばれることを強く願いたいのである。


「歩く意識を持つ」

PinkMoose
今回は歩くことの話である。
少々古い例で恐縮だが、08年の糖尿病受療率の全国データがある。ワースト3は次の県だった。1位香川県(うどん)2位徳島県(鳴門金時)、3位長崎県(ちゃんぽん)。血糖値を上昇させる要因は糖質(炭水化物)であり、これらの県で好んで食される( )内の食べ物の大半は糖質である。直接的原因は糖質を好む食生活にあると推察される。しかし、もうひとつ見過ごせない特長がある。それはいずれも地方都市であるということだ。地方都市では移動手段は圧倒的に車が多い。結果として、運動不足になっているのだ。

ここで考えをまとめておきたい。
現代人は、間違いなく歩かなくなっているということである。

私たちの生活は確実に歩かなくても良い方向に流れている。車だけでなく、エレベーター、エスカレーターなど歩くという点では魔の手は増え続けている。GM読者は、普段から歩くことに意識があると思われるが、それでもあえて、歩くことの重要性を読者に訴えるのは歩かなくなって起こる下半身の衰えはゴルフにとって致命的だからである。今月から連載を組む「下半身からスイングをつくる」も下半身が衰えては話にならない。下半身が不安定ならば確実に飛ばないし、スイングバランスの破綻を招く。

ゴルフが上手くなりたいという気持ちこそが、普段から歩くことを意識することを生むと思う。そうまでして注意喚起しなければ、知らず知らずのうちに私たちの生活は歩かない方向に傾いているのである。「歩く」という意識を持つこと。現代ゴルファーには上達の隠れた条件となっているのだ。


「想定練習のすすめ」


“Real” golfers / redjar

今月は、練習の考え方についての話をしよう。

2012年1月7日、全国高校ラグビー選手権大会で史上5校目となる3連覇を達成した東福岡高校。大会前の練習で恒例となっているのが、あらゆる状況を設定して行われる「想定練習」である。「後半残り10分。5点リード」「後半残り15分。4点ビハインド」というように時間と点差を設定して、実践練習を行う。自主性を重んじる谷崎前監督が練習の狙いとしているのは適切な状況判断能力の鍛錬である。

ここで考えをまとめておこう。
人間は情報を受けとると、それが行動に反映する生き物であるのだということ。特に精神的なプレッシャーを受ける状況下では、判断力や行動に大きな影響を受ける。

適切な状況判断という点でいえば、ゴルフもまたその能力が問われる競技だ。1番ホールから18番ホールまで、精神状態は、刻々と変化する。であるならば、ゴルフにおいても想定練習の効果は大きいといえる。「前のホールで、+4を叩いた次のホールのドライバー」「フェアウエイセンターからの2打目のアイアン」というように+、-の両面での状況を設定して、メンタル面も組み込んでショットの練習をするのである。状況のイメージや心理状態をできるだけ再現して練習するのだ。そうすると「プレッシャーをうけるとアイアンはショートしやすい」などといった自分独自の課題が見えやすくなる。さらにプレッシャーとの距離感を掴み、一球一球をていねいに打つ、実践的なスキルを身につけることができるだろう。

ちなみに東福岡高校ラグビー部は、遠距離通学生が多い為、練習時間が短い学校としても有名だ。短時間に効果的に練習をするという意味でも想定練習は忙しい毎日を送るアマチュアゴルファーにも適した練習法でもあるのだ。


「今月は筋肉の話をしよう」

Neil Rickards
今月は筋肉の話をしよう。
昔、ゴルフ好きというある国会議員がゴルフをしているニュース映像を見た。もう鬼籍に入られたこの先生、当時70歳代だったと思う。「これは見ていられない」という残念なスイング。一緒に回っている若手国会議員が「ナイスショット」とかける声に同情したものである。しかし、気になることがあったので、その映像を巻き戻してみた。するとあることに気がついた。クラブの動きを無視して、体重移動だけをみると、上手なゴルファーの動きだったのだ。では、なぜ不自然に見えたのか?それは、アドレスから描く不自然なクラブ軌道、奇妙な位置で止まるトップ。そして、からだの回転を無視したようなクラブの動きがその理由だった。
そしてその原因は・・・・。それはからだに柔軟性を欠いていたからだった。この先生、昔は、上手かったのかもしれない。

ここで、考えをまとめておきたい。年齢とともに衰えるのは、筋力だけではない、柔軟性も衰えるのだと。ゴルフにおいて、柔軟性は極めて重要な要素だ。ゴルフの動きは、驚くほど日常生活とリンクしていない。ゴルフの動作は、「非日常」な動きなのだ。

右利きの人の場合、左手を肩のラインまで水平に上げ、そのまま右肩の肩甲骨を掴んでほしい。程度の差はあるだろうが、背骨から左半分の筋肉のいくつかの箇所に突っ張り感を感じないだろうか。アドレスに入った瞬間と同じこんな単純な動きでも人間は普段このようにからだを使わないのだ。

この問題を解決する方法は、やはり素振りだろう。アドレスからトップの位置までの動作確認だけを集中的にやってもいい。すると普段から筋肉の稼働領域を広げておくことの必要性を痛感するはずだ。このような意識を持っておくと、ストレッチの重要性が理解できるようになる。この「理解」が何より重要だ。なぜならば、重要性の理解が行動に反映するからだ。結果の大きな差は、思考の小さな差から生まれる。イチローがいつもストレッチをしているのは、筋肉の柔軟性の重要さを深く理解しているからなのである。


「ヘッドスピード重視は正しい思考か?」

pocketwiley
ヘッドスピードが上昇すれば、ボールはよく飛ぶ。ゴルファーならば、体験的にこれを知っている。だからだろうか、ヘッドスピードを重視するゴルフファーをよく見かける。近年、ヘッドスピードを計測することが容易にできるようになったこともそれを加速させている。この傾向は、メーカーのクラブ開発にも影響を与えているようだ。「XXIO」(SRIスポーツ)や「PHYZ」(ブリヂストンスポーツ)といったブランドのドライバーは300gを切る重量にまで軽量化。主な理由は、ヘッドスピードを上げるためだ。「軽いクラブはヘッドスピードがあがる」は間違いではない。しかしそれは、「ボールが飛ぶ」ということを必ずしも意味しない。なぜなら軽量化クラブは「運動エネルギーは質量に比例する」という物理学の法則に反するからだ。

ここで、考えを切り替えたい。
ヘッドスピードは、「上げるもの」ではなく、「上がるもの」と理解すべきなのだと。

まずは、自分にとって適正なクラブ重量を掴むことが大切だ。目安は下半身の筋肉を適度に使わないとコントロールできない重量。軽すぎるクラブは「手打ちになるリスク」を抱えるからだ。適正重量は、もちろんゴルファーひとりひとり違う。上手いゴルファーは、何においても「自分の数字」を把握している。ゴルフは、自分と向き合うスポーツであるからだ。ヘッドスピードの高い数値は、適正重量のクラブで正しいフォームからうまれる。そう考えておけば、ヘッドスピードとうまく付き合えるのではないだろうか。ヘッドスピードの上昇は、ボールを遠くに飛ばすための必要条件ではあるが、十分条件ではないのだ。

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